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2016.12.16

[特集]ダイレクトマーケティングはもう古い?! 米国マーケティング最新事情(1)

企画本部 ダイレクトマーケティング・ストラテジスト
篠崎 直人

 2016年10月17日。この日、マーケティング界がまた新たな転換点を迎えた。

 今、ダイレクトマーケティングの先端で何が起きているのか?ロサンゼルスで開催された米国ダイレクトマーケティング協会(DMA)のイベント「&THEN」に参加してキャッチした最新トレンドを連載でお届けする。第1回目は「マーケティングの転換点」について述べよう。

世界最大のマーケティング組織からの重大発表

 10月のロサンゼルスは一日の中で季節が変わる。朝晩は15〜17℃と肌寒いものの、日中は30℃を越え、目を刺すような陽光が容赦なく降り注ぐ。
 16日から18日の3日間、ダウンタウンのコンベンションセンターにて米国ダイレクトマーケティング協会(DMA)主催のイベント「&THEN」が開催された。私は日本ダイレクトメール協会主催研修の一員として、ちょうど1年前に開かれたボストン大会との差分を視察するため参加した。

会場入り口「&THEN」会場入口の様子(ロサンゼルス・コンベンションセンター)

 「&THEN」は世界最大のダイレクトマーケティングの祭典といわれ、以下の4大コンテンツで構成される。

・著名なスピーカーによる基調講演
・ダイレクトマーケティング広告賞「ECHO AWARDS」の贈賞セレモニー
・マーケティング支援事業者による展示
・細分化されたテーマのミニセミナー(各45分)

 会期2日目の10月17日。朝一に行われた基調講演のメインスピーカーは世界的に有名なマーケティングコンサルタント、サイモン・シネック氏であったが、その前にDMA理事長から重大な発表が行われた。

 それはDMAそのものが名称とロゴを刷新する、というものだ。従来DMAとは “Direct Marketing Association” の略称であったが、今後 “Data & Marketing Association” に変更するという。ご覧の通り「ダイレクトマーケティング」という冠が取れたことになる。この変化はどのような意味を持つのだろうか?

DMAの名称変更が意味するもの

 実は今思えば兆候は昨年からあった。
 「&THEN」というイベント名称がついたのは昨年が初めて。それまでは単に年次大会と呼ばれるに過ぎなかった。夏目漱石の小説「それから」の英訳が「And Then」なのだが、まさにマーケティングおよびDMA自身の今後のあり方や向かう先を問い掛けるようなネーミングが昨年から付いたのだ。

 スマートフォンやタブレットの普及、SNSの爆発的浸透、AIの実用化などの急速な進展で、私たちの生活は10年前では考えられないほどに変容した。同時に広告・マーケティングの領域においても、ビッグデータに始まりマーケティングオートメーションの導入、DSP(Demand-Side Platform)やプライベートDMP(Data Management Platform)、ニューロマーケティングなど新たなトレンドワードが次々と折り重なり打ち寄せる波の如く業界を賑わしている。

 そのような環境下にあってDMAが投げ掛けるのは、次はどんなテクノロジーが出てくるの?という点もさることながら、マーケティングと生活者の関係性(生活者の変化に対するマーケティングのアプローチ)がこれからどうなっていくのか?=and THEN?という視点だろう。生活者の行動の大半が理論上はデータで捉えることができ、趣味嗜好やいつ何を買いどんなサービスを利用するかまで高精度で判定や予測ができる。しかもその「作業」のほとんどはマシンがやってのけてくれる。

 ではこれからマーケターに求められることは何だろうか?そして誤解を恐れず結論づけると、それは「creativity」だというのが現時点でのDMAの提言であると理解している。今回のイベントのメインテーマが「the Science of Creativity」であることからしてもあながち的外れではないだろう。

入り口付近にて入口付近にて(筆者)

すべてがダイレクトマーケティングに

 今年、さらに踏み込んでイベント名称のみならず母体であるDMA自身の名称から「ダイレクトマーケティング」を外したのは、もはや全てのマーケティングがダイレクトマーケティングである、またはダイレクトマーケティングに成り得るということだ。

 これまでダイレクトマーケティングはマスマーケティングと対比的に語られることが多かった(この捉え方は適切ではないと思うのだが)。マス広告はブランドの認知〜店頭誘導までを主に担い、時に社会的ブームやトレンド形成を牽引する花形的存在=Above the Line。これに対し、DMやEメール、テレマーケティングなどは限定された「特別な」ターゲットに対して「水面下」で直接的に行動喚起を促すことから、リーチ規模の面では地味な存在=Below the line、という対比だ。

 しかし、WebないしIoTなどのデジタルテクノロジーの進化に伴い、「生活者データ」があらゆるマーケティング投資判断を支配しつつあり、必ずしも従来型の「上下関係」あるいはヒエラルキーのようなものは通用しなくなってきている。企業の関心はマスもダイレクトも境目なく、いかにすべてのチャネルを通じて矛盾なく顧客体験価値(カスタマーエクスペリエンス、CX)を提供するかにシフトしている。情報発信と拡散の主導権は生活者に移り、企業などがブームを仕掛けることは甚だ困難になった。広告はその費用対効果の説明をシビアに求められようになった。同時にDMやEメールも。媒体単体での存在価値は維持しつつも、マスも絡めた包括的な文脈の中での位置付けを明確にする必要に迫られたといって差し支えないだろう。

 こうした状況を謙虚に捉え、今一度自らの存在意義を見つめ直した結果、「Data & Marketing」というある意味”平たい”名称への変更に至ったものと考察される。

 発表自体は10分程度の短いものだったが、考えさせられることの多い内容であった。

篠崎 直人
ダイレクトマーケティング・ストラテジスト
2004年トッパン・フォームズ株式会社入社。化粧品・健康食品の単品リピート通販業界を中心にダイレクトマーケティングの戦略プロデュースに従事。トッパンフォームズのダイレクトコミュニケーション・ソリューションブランド「Ugocus」を創設。宣伝会議賞、BtoB広告賞、全日本DM大賞、DMA国際エコー賞受賞。通販検定1級。第30回 全日本DM大賞二次審査委員。

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