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2017.01.23

[特集]米国版さとり世代「ミレニアルズ」のトリセツ 米国マーケティング最新事情(3)

企画本部 ダイレクトマーケティング・ストラテジスト
篠崎 直人

 今、ダイレクトマーケティングの先端で何が起きているのか?ロサンゼルスで開催された米国ダイレクトマーケティング協会(DMA)のイベント「&THEN」に参加してキャッチした最新トレンドを連載でお届けする。
 第3回目はTEDで一躍有名になったサイモン・シネック氏の基調講演レポート。日本のさとり世代に似た「ミレニアルズ」について、一流マーケターの視点をウォッチしてみよう。

ミレニアルズとは?

 今回の「&THEN」の目玉の一つが、今やマーケティングの枠を超えてその名を広く知られるオピニオンリーダー、サイモン・シネック氏による基調講演だ。国連やペンタゴン、世界的大企業に対して「人々をインスパイアする方法」を伝授してきた彼が今、DMAのステージで何をテーマに語るのか注目された。
 華々しいスタンディングオベーションに包まれて登場したシネック氏が掲げた主題は「ミレニアルズ(Millennials)」との向き合い方についてであった。

 ミレニアルズ。もはや目新しい言葉ではないかもしれないが、今一度確認しておきたい。今、なぜ米国マーケティングにおいてこの言葉がかくも話題をさらっているのだろうか?

ミレニアルズとは、
・ベビーブーマー(1946〜1964年生まれ)の子供世代に当たる現在10代後半~30代前半の世代グループ
・米国人の4人に1人以上〜3人に1人という米国最大の世代であり、米国経済を大きく左右する存在
・ミレニアルズ世代がここ数年で成人または消費年齢に達している

 しかし米国のマーケティング関係者はミレニアルズの心をつかむのは困難と訴えている。
 その理由は2つ。「史上初の『デジタル・ネイティブ』であること」と「未曽有の『多人種』グループであること」から、“未知なる存在”として捉えられているだめだ

サイモン・シネック氏が与える4つの視点

 「マーケティング業界は本当の意味で人間を理解しようとしていません。データをとり、トレンドを追いかけているが、そのトレンドが健康的なものか?不健康なものか?そういった根っこを捉えているとは言えません。」
とは、シネック氏の講演冒頭の刺激的な問題提起である。

 従来の価値観では捉えきれないミレニアルズを前に彼らの”研究”に躍起になるマーケターに対し、彼自身への自問の意味も含めて、向き合うべき相手の正確な姿を捉えようと語りかける。

 シネック氏は、彼独自の4つの視点「P・T・I・E」を持ち出してミレニアルズの「本質」を説明する。少々極端で辛口な気もするが、同氏の言葉を引用して以下に詳しく述べよう。

(1)第一の視点「子育て」(Parenting)
 この世代は、残念ながら欠陥のある子育て戦略を導入した善意の両親に育てられてきました。ミレニアルズの親たちは自分の子供の「親」になることよりも、むしろ「友人」になりたいと願いました。彼らは自分の子供に「君たちは特別で、欲しいものややりたいことは何でも、望みさえすればすべて手に入る」と言い続けました。
 だからミレニアルズはゆがんだ自意識を持っています。それ以前の世代よりも低い自尊心をもって成長した世代と言えます。

 そして覚えておいてください。これがSnapChatやInstagram、Facebookの世界です。この世界は、フィルタリングの大変得意なミレニアルズが実際の姿をさらけ出さずに、あなたに見てほしい姿だけを見せる絶好の場なのです。皆タフで自信にあふれているように見えますが、実はそうではないのです。

(2)第二の視点「技術」(Technology)
 ソーシャルメディアやスマートフォンによる中毒性の影響が大変懸念されます。ミレニアルズは、アルコール、ギャンブル、ニコチンのような中毒性のものと同じく、コントロールなしにドーパミンを与えるデバイスに接着剤でくっつけられたようにして成長してきました。彼らはソーシャルメディアやスマートフォンに完全に依存して思春期を通過した世代です。人生で機能する必要のある貴重な社会的スキルを習得していません。健全に意見を戦わせることを過剰に恐れています。

 こうしたことはチームワークの重要な部分ですが、自分のスマートフォンというシールドに隠れて育ってきたミレニアルズにとっては試練なのです。

(3)第三の視点「うたれ弱さ」(Impatience)
 ミレニアルズは、喜びを即座に得られる世界で育ってきました。インターネット、エンターテインメント、通信、さらに「タップ(すること)」は、何かをしたいと思えばすぐにその物事が起こると期待させます。
 彼らはこの期待を他の人と仕事の満足度や持続的で有意義な関係を構築するようなシーンに誤って適用しています。もちろん、対人関係や仕事においてはいつでも欲しい結果がすぐに得られるものではありませんので、彼らは簡単に飽き、頻繁に仕事を変えます。彼らが本来生活するうえで必要なスキルを代行してくれる技術への依存度は対処しようがないほど高いレベルに達しています。

(4)第四の視点「環境」(Environment)
 ミレニアルズは、自分に自信が持てずに育ち、デバイス中毒になっており、必要な時に助けを求めることができません。我々は彼らが勇気をもって飛び込んできてくれると思いながら「ドアはいつでも開いているよ」と待っています。そして企業環境において数字の優先順位付けを求めています。しかしこれでは誰かが自分を気にしてくれているという感情を彼らが抱くことはありません。

 我々は彼らに「自信」というものを教えてあげなければなりません。デバイスから切り離し、忍耐を植え付ける責任があるのです。

日本の「さとり世代」と米国の「ミレニアルズ」

 こうしたミレニアルズの解説を聞くと、あらためて日本の「さとり世代」※との類似点が多いことに気付かされる。

 筆者は現在37歳なので彼らのちょっと先輩世代に当たるのだが、「物知り」でがむしゃらさや押しの強さを感じさせないクールで淡白な気質は確かにこの世代に通底しているような気がする。とはいえミレニアルズもさとり世代も同世代間での「つながり欲」は他のどの世代よりも強く、SNSで「いいね」してもらいやすい”ネタ探し目線”で街を歩きネットサーフィンをしている。モノやサービス自体よりも、それらの消費によってどのような「経験」や「思い出」を手にできるのかが重視されることを理解しなければならない。

 皆さまの商品やサービスは、どのようなエンターテイメントを彼らに提供できるだろうか?

※さとり世代:世代区分としては現在の20代である「ゆとり世代」(1987年度~1996年度生まれ)と同じであり、同世代の別表現とされることが多い。堅実で高望みをしない、現代の若者気質を表す言葉。
具体的な特徴として、「車やブランド品に興味がない」「欲がなく、ほどほどで満足する」「恋愛に淡泊」「海外旅行に関心が薄く、休日を自宅やその周辺で過ごすことを好む」「節約志向で無駄遣いはしないが、趣味にはお金を惜しまない」「さまざまな局面に合わせて友達を選び、気の合わない人とは付き合わない」などが挙げられる。
(出典:(株)朝日新聞出版「知恵蔵2015」)

篠崎 直人
ダイレクトマーケティング・ストラテジスト
2004年トッパン・フォームズ株式会社入社。化粧品・健康食品の単品リピート通販業界を中心にダイレクトマーケティングの戦略プロデュースに従事。トッパンフォームズのダイレクトコミュニケーション・ソリューションブランド「Ugocus」を創設。宣伝会議賞、BtoB広告賞、全日本DM大賞、DMA国際エコー賞受賞。通販検定1級。第30回 全日本DM大賞二次審査委員。

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