FOCUS of LABOLIS

2017.04.21

「DM week 2017」「0秒」で恋され、 ずっと愛される ブランドコミュニケーション

「0秒」で恋され、ずっと愛されるブランドコミュニケーション

DM week 2017 セミナーレポート

戦略も分析も全ては「表現」されて初めて受け手に伝わります。
深く鋭い洞察でブランドの核となる価値を捉え、生活者をときめきの渦に巻き込む思考回路とは?
創造的なアイデアの源泉と実例に迫ります。

0秒=ワクワク 想像力

 私がスマートフォンをいじっていると娘もそれを触りたがります。そんなふうに子供は書類を読んだり会議で理屈を組み立てたりすることなく直感的に面白そうと想像できるもの、ワクワクできるものに夢中になります。
「元子供」である私たちもクリエイティブの中で常にそうした素直な想像力を鍛えることを大事にすべきだと思います。

 例えば「想像力会議」と題した不動産総合デベロッパーさんとの企画ではワークショップで子供たちに街や建物を自由に想像し語り合ってもらい、その街の姿を映像化してTVCMにしました。「ビルの上に大きなクマさんが立っていて、雨が降ったらクマさんが傘を差してくれる街」なんていう子供の発想に大人たちはそんなの無理と驚くわけですが、CGも駆使して映像化に成功、大人たちも頑張りました。

 子供の気持ちになって、という例の続きになりますが、自動車メーカーさんと「夢のクルマアートコンテスト」と題した企画を行っていて、世界中の子供たちがたくさんの夢のクルマの絵を応募してくれています。その絵と想像の世界、子供たちへのインタビューを映像化してTVCMにしています。子供たちの「伝えたい気持ち」を感じていただけたらと思います。

 私たちはつい当たり前のこと、分かっていることを飛ばして会議を始めたりしてしまいがちですが、「0秒」で感じる驚きや疑問や楽しさ、そうした一番手前にある好奇心にきちんと取り組むことは大切だと思います。毎日好奇心に出会うことは子供だけの特権ではなく大人になってもできるはずです。

 私は企画を考える時いきなり遠くにいる消費者や視聴者を見るのでなく、まず目の前の人に喜んでもらうことを考えます。些細に思えるようなことでもそれが誰かの喜びにつながってくれるのならこんな嬉しいことはない…保育園や動物園の空間デザインもそんな気持ちを大切にして行いました。
10年前に装丁を手掛けた育児事典を娘が生まれた今、家族で普通に使っているととても不思議な感覚になりますが、そう考えると今作っているものも将来誰かの暮らしの元にあるのだと感じることができて、デザイナーとして気持ちが引き締まります。

0秒~カラダ トキメキ

 呼吸を止めてみても鼓動を感じるように心はカラダに乗っかっています。言葉より先にあるカラダでの感覚や表現を私は大切にしています。
会議をしていても、例えば隣席の人と手と手、肩と肩をぶつけてみて、その実感や波動が街に、世につながっていくような感覚を意識しています。2010年から2011年にかけて放送された連続TVドラマのオープニングでは、ドラマのモチーフのお好み焼きを多くの人がダンスで表現してつながっていく「参加型」の映像を作りました。

0秒=初恋

 「これが最後の恋かもしれないと思う恋が初恋」という言葉がありますが、そのくらいの強い思いを感じてもらえるものを作れたらいいなといつも思っています。
NYでテロが起こった後、地下鉄の中吊り広告が空になっているのを知って、すぐに音楽プロデューサーとアーティストに声を掛け「この世をもう少し好きになってみる」というメッセージをレース職人の方に作っていただいたビジュアルに込めて掲出しました。
そのアーティストのCDジャケットやPVも一瞬でハッと初恋に落ちてもらえるようなものになるよう意識して作りました。スーパーマーケット内にキャンディーや缶詰が舞い飛ぶ映像も全て人の手でものを投げたりぶつけたりしました。現場の皆が面白いと感じながら取り組める環境を作ることも大切だと思います。

0秒=ストーリー

 アイデアを考える時に私が実践している方法を一つ教えましょう。新しい案件に取り組む時、オリエンを受けた後に私はまずその仕事用の音楽プレイリストを作るんです。
デザインにはフォント、レイアウトなどさまざまな要素がありますが、その案件用のプレイリストを常に耳にしながら思考を紡ぐ。そうすることでフォントは何、色使いはどう、といった構成がブレない形になっていきます。音から発想して作ったアパレルメーカーさんのTVCMでは、最終的に楽曲づくりそのものにも参加しました。

 マーケティングの学術的なところからは少し離れたエモーション寄りのお話になりましたが、積み重ねたものから一度ジャンプしてみる、立ち戻ってみることで「0秒」で恋され、ずっと愛される仕事の仕方が見えてくるのではないでしょうか。それは保育園の空間づくりであっても、グラフィックであっても、TVCMやPVであっても媒体を問わず変わらないものだと思います。

 東日本大震災の日はちょうど飲料メーカーさんのCMの撮影日で、撮影は中断されました。プロデューサーさんから、何か広告でできることはないだろうかと相談され作ったのが、その飲料メーカーさんのCMに出演しているタレントさんたちによる「歌のリレー」です。
デザイン・広告という仕事は人と人との間で行うもので出来ることに限りはありますが、今取り組んでいるものが何が起きるか分からない明日にあっても、子供たちの細胞に宿っても失礼のないように。そんな気持ちで仕事をしています。

profile

森本 千絵 氏(もりもと・ちえ)●1999年、博報堂入社。2007年にgoen°(ゴエン)設立。大手企業の広告、テレビドラマのオープニングタイトル、ミュージシャンのアートワークやPV演出、映画・舞台の美術や動物園・保育園の空間ディレクション、今春発売のビール飲料のアートディレクションなどその活躍は多岐に渡る。
N.Y.ADC賞、ONE SHOW、朝日広告賞、アジア太平洋広告祭、東京ADC賞、JAGDA新人賞、SPACE SHOWER MVA、50th ACC CM FESTIVALベストアートディレクション賞、日経ウーマンオブザイヤー2012、伊丹十三賞、日本建築学会賞など受賞多数。
東日本大震災復興支援CM、サントリー「歌のリレー」でADCグランプリを初受賞。

(所属、役職は講演当時のものです)

お問い合わせの後の流れ
お問い合わせの後の流れ

記事についてのお問い合わせ・ご相談はこちら

※コーポレートサイトに移動します。