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2016.06.29

「DM week 2016」フィジカルな体験が創り出す ブランド戦略

フィジカルな体験が創り出す ブランド戦略

DM week 2016 セミナーレポート

B to Bマーケティングで、DM(ダイレクトメール)やテレセールスなどオフラインでのダイレクトマーケティングにも注力する日本マイクロソフト。デジタル時代におけるこれらの役割と狙いは何か。コーポレートマーケティング部長の友廣氏との対談を通じて、宣伝会議の谷口氏がその展望に迫りました。

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谷口:

IT業界でB to Bの専門家としてご活躍の友廣さんに、B to Bマーケティングの最先端の取り組みについてお伺いします。

友廣:

私の部門のミッションは、売り上げに結び付くパイプライン(見込み顧客・案件)をどう醸成するかです。
B to Bマーケティングにおける最初の一歩は顧客のセグメント化です。当社は顧客規模によって「Small Business」、「Mid Enterprise」、「Large Enterprise」の3段階でセグメント化しています。その中で、私の部門は一定規模以上の会社であるMid EnterpriseとLarge Enterpriseがターゲットとなります。

それらの会社群からパイプライン(見込み顧客)を醸成するために、我々はさらに細分化された4つのミッションに取り組んでいます。
1つ目は、Pipeline Creation。優良なパイプラインをできるだけたくさんつくることです。これが最初の関門といえます。
2つ目は、Pipeline Acceleration。我々はそれぞれのパイプラインを0~100%で評価しています。売り上げ(Win)を意味する「100%」まで2年以内に持っていくことが2つ目のミッションです。
そしてパイプラインをある程度まで育てることができたら、3つ目である優良顧客の囲い込み、つまりExecutive Engagementが必要になります。
そして4つ目はModern Tele。インハウスのテレマーケティング部隊を用いて、Inboundからの有望な見込み顧客を育成します。このModern Teleは、英語圏を中心に広まりつつある新しい手法です。

Modern Teleに限らず、DMとTeleを併せて使うのは実は非常に有効です。我々はDMを送りっぱなしにすることはほとんどなく、必ずTeleでフォローコールをして開封率を上げています。また、それをすることで顧客データを常にフレッシュな状態に保っています。昇進や異動、退職によって連絡窓口は変わっていきますからね。DMを送ることは、ダイレクトマーケティングでありデータベースマーケティングでもありますから、今現在コンタクタブル(連絡有効)なデータをどれくらい持っているかが非常に重要なのです。

DMで獲得した見込み顧客をWebへ誘導しアクションさせる

谷口:

御社は全日本DM大賞を受賞するなど、リアルメディアのDMも積極的に活用されていますね。

友廣:

2013年、現在のskype for businessに相当するLyncという製品のDMで全日本DM大賞を受賞しました。

日本マイクロソフトのテレワークツール「Lync」のDM。

インターネット回線を通じて電話やテレビ会議ができるこの製品の訴求ポイントは、相手の顔を見ながら話せる機能です。これをDMでも連想できるよう封筒には1か所だけ窓をつくって、そこから顔写真が見えるようにしました。この窓はDM本体にも作り、どのページをめくっても同じ顔写真が見えます。封筒を開けてページをめくるというフィジカルな体験に合わせてワクワク感を演出する仕掛けです。このような工夫で訴求ポイントを強く印象づけるのはDMの役割であり、強みといえますよね。

もう一つのDMの役割は、その製品がもたらす価値をシナリオに仕立てて具体的に伝えること。このDMでは、その役割を同封のDVD(動画コンテンツ)に持たせました。そして無料体験や契約などのエンドアクションはWebへ誘導するというストーリー設計です。
リアルのDMで訴求ポイントを明確にし、シナリオを見せて納得させた上でWebのエンドアクションへ誘導する。「しっかり伝えるリアルメディア」と「素早いレスポンスに対応できるWebメディア」。この違いを踏まえた上でDMを作ることが大切だと思いますね。

谷口:

新規顧客の開拓や契約の更新など、目的によって説得・納得のさせ方にも違いが出てくるかと思いますが、具体的にはどのようにDMを使い分けているのでしょうか?

友廣:

私は、DMは目的によって4つのタイプに分けられると考えています。 
1つ目はAwareness(情報提供)型。顧客に全く認知されていない商品やサービスを知ってもらうためのDMです。
2つ目はPrice Offering(価格訴求)型。価格改定の時などに「今買うとお得です(=Buy Now)」と知らせるためのDMです。
3つ目がValue Prop(価値訴求)型。IT企業の製品はそもそも、must haveというよりもnice to haveであることが多い。顧客からすると「今使っているOSで十分だから、新製品はなくても困らない」となるわけです。だからこそ、その製品がどれだけワークスタイルを変えるか、仕事の効率を上げるかという新たな価値観をシナリオとして見せるDMが活きてくるのです。
そして、4つ目がRetention(契約更新)型。「もうすぐ契約が切れますよ、更新しませんか」と知らせるDMです。保険などの金融商品のDMに多いですよね。
この4つの中で、我々がよく作るのはPrice Offering(価格訴求)型とValue Prop(価値訴求)型のDMです。やはりDMの持つ「伝える力」を発揮しやすい場面で使いたいという思いがあります。

谷口:

友廣さんが考えるB to Bマーケティングのゴールとは何でしょうか。

友廣:

やはりDemand Generation(需要の創出)ですね。最初に述べた「売り上げに結び付くパイプラインの醸成」と重なりますが、DMの目的は売り上げを伸ばすことです。そのためには営業担当者との連携も必要ですし、最近では、世界的な潮流となりつつあるマーケティングオートメーションに対応しながら結果を出すことも求められています。
ただ、基本的なところに立ち戻ると、DMを含めたマーケティングは「人を動かす仕組みづくり」です。マーケターの抱える課題は多岐に渡りますが、決められた答えはありません。人間としてのインサイトをどう持って、いかに人を動かすストーリーを作っていけるか。ここに、マーケターとしての力量が問われていると思います。

profile

友廣 啓爾 氏(ともひろ・けいじ)●複数のIT企業にて法人向けマーティングを経験し、現在日本マイクロソフト(株) エンタープライズマーケティング本部に在籍。B to B向けキャンペーンの立案と実行を取り持つ部署を率い活躍中。

profile

谷口 優 氏(たにぐち・ゆう)●2000年、(株)宣伝会議入社。『環境ビジネス』副編集長、『編集会議』編集長等を経て、07年より『宣伝会議』編集長に就任。14年、季刊『100万社のマーケティング』創刊。『宣伝会議』編集長と兼務。

(所属、役職は2016年4月1日時点のものです)

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