2016.10.25
幼少の頃からタブレットやスマートフォンなどに親しんでいるデジタルネイティブ世代の高校生。彼らはどのように“紙の創作”と向き合い、どこに魅力を感じているのか? 東京都立大崎高等学校ペーパージオラマ部の制作現場を通して、デジタル世代が“紙”と“デジタル”をシームレスに使いこなす実態をレポートします。
「入部するまでジオラマのことも知りませんでしたが、紙でここまで表現できることに驚きました」、「自分で色を塗り、組み立てていく作業が楽しいです」──1年生部員が話してくれたように、ペーパージオラマの制作は、まさに“紙と向き合う”作業。しかし、制作現場ではデジタル世代らしく、手書きのデッサンをベースにCADによる製図作成や、スマートフォンによる情報共有など、紙とデジタルそれぞれのよさを理解し、上手に活用していました。
「ペーパージオラマは150分の1のスケールで作ります。正確な製図を作るには、手書きよりCADの方が簡単ですね」と話すのは、設計担当の部員たち。取材時にスマートフォンで撮影した現場の画像に定規を当てて採寸する光景も見られました。「建物などは直接測ることはできないので、現場で測った柵や自転車などのサイズと比較して、大きさを割り出していきます」。
また、役割を分担して作品を作る過程では、チームワークやタイムリーな情報共有も重要です。そんな場面にもSNSが一役買っていました。
もともと人と話すことが苦手な部員も、LINEなどでコミュニケーションを取るうちに、だんだんと直接話せるようになるというメリットも。さらに取材画像やメモ書きなどもSNSで情報共有し、作業効率の向上を図っているそうです。
紙もデジタルもシームレスに見ているからこそ、それらが融合することで創造力をさらに広げ、常にアップデートされた作品を生みだすパワーとなっていることを感じました。
これまで数々の賞を受賞し、作品を通して社会とふれあうなど、普通の高校生活ではなかなかできない経験を積んできた部員たち。ペーパージオラマの制作から何を感じているのでしょうか。
「壁にぶつかった時、先生はいつも『どうすればいいと思う?』と自分たちで考えるよう投げかけてくれます。だからこそ、成長できたと思う」、「私たちの作品を見て喜んでくれる人がいることがうれしい。プレゼンテーションを経験して自分から発信するチカラも身につきました」などと、自らの成長を生き生きと語る姿が印象的でした。
“作るだけでなく、生徒と社会をつなぎたい”。顧問である庭野先生の思いと、楽しみながらものづくりと向き合い、多くの人に感動を与えている部員たちの創造力。大崎高校ペーパージオラマ部のさらなる活躍に注目です。
8月に行われた第8回全国高等学校鉄道模型コンテスト2016では、東急田園都市線 たまプラーザ駅の今と昔を表現した「たまプラーザ 50年の夢」(上)と「空想鉄道の夏」(下)を出品。後者は見事、ベストクオリティ賞を受賞!
小澤 史明(おざわ ふみあき)
企画本部ディレクター。クレジット業界のお客様を中心に、フォームおよびダイレクトメール、販促物のデザインディレクションに従事。
鹿島 史葉(かしま ふみよう)
企画本部フォームエンジニア。広告や販促ツールの企画・制作を経て、2013年よりビジネスフォームの制作・ディレクションを担当。
ペーパージオラマが生まれるまで
壮大で心に響く作品は、取材から緻密な設計、そして細かく地道な作業の積み重ねから誕生します。
モチーフ決定〜情報収集取材
モチーフが決まったら、生徒たちが現地取材をしたり、図書館で調べたりして情報や資料を集めていく。
Webからでは得られない貴重な資料の数々があってこそ、緻密な模型ができる。
図面作成
集めた資料や調査データを基に、設計図を作成。
すべての作品が生徒たちによるオリジナル設計だ。
切り出し
0.5mm以下の精度で窓枠などを切り出す。
ここでの作業が最後に大きく響くので気が抜けない。
塗装
資料を参考に調色。全体のイメージバランスを
考えながら、色を再現していく。
組み立て
最終的な仕上がりを左右する作業。
相談や確認を重ね、構造的な補強を入れていく。
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