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2015.07.06

「DM Week 2015」セミナーレポート 視線の動きで見えてくる 「注目性」がマーケティングを 変革する

視線の動きで見えてくる 「注目性」がマーケティングを 変革する

DM Week 2015 セミナーレポート

技術の進化とともに、これまでは感覚としてしか分からなかった部分にまで
科学的なアプローチが可能になってきています。
特に、人間が無意識下に感じていることや行動についての分析は、
ダイレクトマーケティングに対しても大きな変革をもたらす可能性のある分野です。
DM week 2015のために来日したドイツ・アイスクエア社の創設者、ミヒャイル・シーゼル氏の
基調講演「グローバルリサーチ最前線 ! 注目性から得られるコミュニケーションの改善」
および特別インタビューをご紹介します。

 人の視線の動きを可視化し分析する「アイトラッキング」(視線計測)は、マーケティング施策の有効性を検証する方法として、近年注目されています。ミヒャイル・シーゼル氏は、約15年前にドイツ・アイスクエア社を設立。元々、心理学者であったシーゲル氏は、アイトラッキングにより視線移動と、そのとき起きる心の動きを分析し、「注目性」というテーマで研究を続けています。

注意を引く大きなポイントは人の「顔」

 いま私たちは、アテンション・エコノミー(注目経済)ともいうべき時代の中で生きています。人の注目性から得られる情報が、コミュニケーション手法も大きく変えるもので、多くの企業が注目しています。

 消費者はどうやってモノを選んでいるのか。私が心理学者として15年間、非言語的なコミュニケーションの在り方を研究してたどり着いたのは、視線の動きの意味を定義付ける数式はないということでした。しかし、さらなる研究を続けた結果、ダイレクトマーケティング分野における視覚理解のための3段階モデルを構築することができました。その第1段階が“Attract”(注意を引きつける)、第2段階が“Elaborate”(説明を加える)、そして第3段階が“Transfer”(アクションを起こさせる)です。簡潔にいえば、“Get, Hold, Do!”ということです。

 第1段階の注意を引きつける“Attract”についてですが、例えば、アルファベットのMという文字が整然と並んでいる中に、形の似たNが1つだけまぎれ込んでいるのを探すのは難しいですね。ところが、まぎれ込んでいる文字がOならば、すぐに見つけられます。ダイレクトマーケティングでも、考え方は同じです。

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 インターネット通販の「eBay」のあるキャンペーンサイトでは、さまざまな情報がある中で、左側に人物を大きく配置しました。閲覧者の視線は、その人物に0.1秒止まることが分かったのですが、注意喚起という観点からは、この0.1秒に大きな意味があります。また、あるDMでは、文章の真ん中に顔写真を縦に並べて配置しました。閲覧者全員が、記事を1つ読むたびに、顔写真に視線を動かしました。写真の人物が美しい女性でも、ひげ面の男性でも同様の結果です。つまり、人間の「顔」に対して注意が向くということを示す典型的な例です。

 第2段階の説明をする“Elaborate”では、写真と文字との巧みな融合が重要になります。ドイツの航空会社ルフトハンザの広告では、ページの中央に子どもの顔の写真を大きく置き、その子どもの視線の先にメッセージ文を配置しました。まず人の顔で目を引きつけ、続いて広告メッセージを読ませるようになっていたのです。

 性別による傾向にも違いがあります。女性に訴えるときは「言語」が重要になってきます。一方、男性の場合は「ビジュアル」と「ワクワク感」です。男性はよく、自分が論理的だと言いますが、意外にも「ワクワク感」が重要なのです。

 そして第3段階のアクションを起こさせる“Transfer”です。ある車のキャンペーン広告では、中央に大きく車の写真が置かれ、車から引き出された線の先に小さく電話番号が書かれていました。その番号に電話すれば、そのパーツが発する音が聴けるというキャンペーンなのですが、この広告に対して関心があると答えた人は30%にすぎませんでした。しかし、別の車のキャンペーンでは、60%の人が電話をしたという結果が出ました。こちらの広告も中央に大きく車の写真を配置したシンプルな構成なのですが、違いは、手書きの文字で大きく電話番号が書かれていたことでした。これは、写真と文字の融合の仕方次第で、アクションに大きな違いが出てくることを示す良い例です。

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日本人は全体像をつかむのが早い

 われわれは、文化間の違いについても研究を重ねてきています。私が初めて東京を訪れた時、洪水のようにたくさんの看板があり、とても刺激的でした。ドイツにはシンプルな文字の看板があるだけです。このようなアジアと西洋の生活環境の違いは、製品にも影響を与えています。例えば、韓国・LG社とドイツ・ミーレ社の洗濯機を比較すると、LG製には小さなボタンがたくさん付いていますが、ミーレ製はダイヤルが1つあるだけです。

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 ドイツ人と日本人がWebサイトのどこに注目するか、そこに文化の違いがどのように影響するかを調査したこともあります。ドイツ人は、シンプルで、重要な部分がハッキリと目立つWebサイトを評価します。それに対して日本人は、もう少しコンテンツがリッチなもの、複雑な構造のデザインまで受け入れることが分かりました。

 これには、使用する文字の違いが影響していると考えています。日本の場合、漢字、ひらがな、カタカナと3種類の文字があり、それらを使い分けています。しかし、ドイツのアルファベットは30文字ですが、その一つひとつの文字には意味がありません。漢字は表意文字ですから、「水」という漢字を1字見れば水を想起することができます。

 この漢字文化のおかげで日本人は、全体像をつかむのが早く、対象物を短時間で記憶し、さらに対象の数が多くても認知できるのではないかと思います。ドイツ人は、全体像を把握するのには時間がかかりますが、重要なものには長く目を置きます。このような傾向のひとつの要因として文字文化の違いや、精神文化の違いがあるのかもしれません。

 また、印刷物とデジタルの違いですが、印刷物は10倍ぐらい注目度が長続きします。インターネットは、いろいろなところに興味を引く内容があり、クリックすれば簡単に別のところに移動できます。それに対して印刷物は固定的なので注目度が持続するんです。集中して見てもらいたいのであれば、印刷物の方が良いということですね。印刷物は非常に力のあるメディアです。印刷物で成功すれば、W e bでの注目度が3倍上がるという調査結果があるんです。

 このような違いを把握し、コミュニケーションを取りたい相手の文化に留意することが、ビジネスにもより良い結果をもたらすのではないかと思います。

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profile

ミヒャイル・シーゼル氏●理学者。1999年設立されたアイスクエア社の創設者。現在も同社のマネージングディレクターとしてアイトラッキングの研究を続け、さまざまなイベントやワークショップなどで講演を行っている。BVM(ドイツ市場調査協会)ベルリン地区責任者、ESOMAR(ヨーロッパ与論・市場調査協会)会員、DWG(ドイツ広告研究会)会員。

(所属、役職は2015年7月1日時点のものです)

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